このどブス

　結構前に失くしたと思っていたペンをカチカチやっている女を見てショックを受けた。返せよどブス。うそうそ。落し物を見つけて、誰も探していないから使ってやってるんだよねペンが可哀想だもの。違う返せよどブス。うそうそ。たまたま同じペンを持っているんだよね。違う。ある会社のロゴが入ってる。いいよどうせもらい物のもらい物だしくれてやる。うそ返せよどブス。父からもらったんだよ返せブス。あんたかあんたの父は、某企業と取引してんのか？
　出来上がっているコミュニティに後から入っていく難しさも、そこは大人の女。慇懃にならぬ程度に毎日微笑みを絶やさず、感じよくしているでしょうが疲れるくらいに。このどブス私の物を使ってんじゃねえよ。成人して数年たっても自分を名前で呼んでんじゃないよブスの癖に。20代も折り返して、どうしてこんな小学生レベルの得体の知れぬ嫌な思いをしなきゃいけないのだ。ブスは性格が歪んでる。押しなべて、根性が顔に浮き出たブスはほぼ100%屈折してる。だからブス度も8割増し。
　私は大人の女なので、何も見なかったのだ。ここに来てから少しして、ある女子からこのブスについて相談を受けていて、このブスがどこか屈折したウェットな感性の持ち主であるということは聞いていたよ。でも私はブスについて「キモいやつだね無視していいんじゃない？」とは言わずに、「繊細な子なんじゃない？」と言ったのだ大人だから。人の心に余計な波風は立てない。
　だからかわいそうなブスと思って、私は何も見なかったのだ。敵に回すと恐いブスらしいから。私はくすぶった劣等感と屈折した優越感でじっとりした女が心底気持ち悪いので、距離を置いておこうと思った自分の直感を信じて、私は大人なのでブスのことなんて知らない。ブスがたかだか赤黒ボールペンとシャーペンが一体化したグリップの持ちやすい便利なペンを持っていたって、そんなもんはくれてやる哀れなやつだ。
　私がついどこかに置き忘れたんだと思うけれど、でも普通に考えて、明らかに自分のものではないペンを、ごく普通に使い続けられるその神経が理解できない。やっぱり素直にキモい。ペンの一本どうだっていいことなのに、ここまでショックを受けた自分がキモい。
　ああいうタイプの女は、「それ私のだよ。さがしてたのありがとう」とかいって笑って指定することを受け入れないタイプだと思う。恥をかかせてとかそういう方向に感じ取るタイプだと思う。屈折したブスだから。面倒くせーなもういいや。こんなことはもなかに吐き捨てて忘れてやる。肌身離さず持っていなかった私が悪いのだ。でも肌身離さずを心掛けるほど大事にしていたわけでもない。じゃあいいじゃん。でも私にとって父は大事な人で、大事な人が私にくれたものを平然と使っている人がいるんだと思うと心底キモい。ブスはキモいその根性が気持ち悪い。うっかりこのエントリーを読んで気分を害した人がいたらごめんなさい。でもあまり悪いと思ってない。