袋いっぱいに詰まった博打

 お正月バーゲンの季節が脇をすり抜けてゆく。私を無視して。お金が欲しいのいちおくえんでいい。安定が欲しい安心が欲しい安全が欲しいマンションが欲しい。
 福袋を奪い合う女子たちをテレビで観たよ。人間の眠れる狩猟本能がむき出しになる様を目撃した気分。おお…。
 いくら好きなブランドだからといっても、お片づけしてしまいたいものの詰め合わせのような気がしてなんともはや。売れ残りや早く処分したいものが入っているに違いないと考える人は、人生を楽しめない人。だいたい入っている総額が福袋値段の何倍であれ、どんだけお得であれ、このブランドなら何でも着る!というほどシャレ者でもないので、どうにも博打のように思われる。出てきたものが黄色とかオレンジとかベビーピンクとかパステルグリーンとか何でもいいけど、とにかく一生着そうもない色だったらどうするのだ。
 偏屈者であるがゆえに、どんな色も両腕を広げて受け入れられるほど、心が広くなれない。●●のお洋服だったら何だって!というほどの一途者にはまだなれない。とかく福袋は金欠の私でさえ貧乏くせ−なと思うほどに貧乏くさいのでヤダ。
 そうして、どうしてもどうしても幾つになっても、布のひきつれや過剰なひだや、ねじれゆがみ左右非対称に、もうどうしようもなく胸をかき乱される。これはきっともうフェティシズムなのだと思う。なので、布感がわさわさした黒のスカートを一着だけ、買いました。