演者・キム様

 キム様の感想は、「ああ木村拓哉はキムタクなんだなあ」。キムタクというのはもう確立されたブランドなので、日本のドラマがキム様に望んでいるのは、キムタクであることなんだと思う。だから何を演じてもキムタクなんだけど、それでいいし、それがいいのだわたぶん。夢の世界にリアリティなんて不要。レーサーになったりホッケーやったり美容師になったり、要はキムタクに色々とコスプレさせているようなもの。「キムタクが○○だったら、かっこいいじゃん?」これ。
2046 [DVD] ウォン・カーウァイの『2046』では、確かに木村拓哉はどうしようもなく下手で、ナレーションも無機質になりきれないくせに棒読みだった。それは、キムタクじゃない人物を求められたからじゃなかろうか。本人も痛感したんじゃないのかな。自分は俳優ではなくて、キムタクなんだってことを。あれが木村拓哉の限界。キムタクであることを大前提に作られた役じゃなきゃ、困ったことになってしまう。
 スター然としたスターのいないジャパンの芸能界で輝き続けるキム様。スター性やカリスマ性なんて、所詮周囲の大人が作るもの。バラエティーであっても「キムタクとしてのオレを演じる男」であり、「自然体のオレ」を演じる不自然体なスカシ口調とフランクな態度は不変。もうこれが普通になっているのだろう。彼はキムタクという象徴。本人は大変そうだけど、便利でイケてるポップアイコンである限り、斜陽はなさそう。