過ぎはしないけれど

 おフランスのパリでは、腐れ縁のパリっ子のとこにお世話になり、久しぶりの恋人ごっこをして帰ってきた。
 一緒にいて楽しくてしょうがないのは、そりゃあ過去その人と時間を過ごしたにはそれなりの理由があるからで、いつまでも一緒にいないのは、やっぱり一緒に居ないことにはそれなりの理由があったからだなあって、考えながら時間を早送りしてジャポンに戻ってきました。
 もう10年若かったら何を始められただろう、もっと早く何かを決心して準備していたら、今欲しい立場をすでに手に入れていただろうか、なんて田舎町のアトリエや工房や製作所を見学しながら考えた。
 奇しくも三十路になっちゃったんだ。これから何かを用意して始めるには、すごく時間を無駄にしてきてしまった気がする。何を始めるにも遅すぎるなんてことはないけれど、ちょっと遅いよなってことはある。語学をネイティブ並みに磨きあげて技術養成校なり高等美術学校なりに潜りこんで工房に研修で入り込んでそれでそれでそれで。
 時間がない。1年だって惜しい。それで、ジャポンからすっと消えたいんだ過去も名前もないとこに。わかってるこれはただの夢。Rとパリで恋人ごっこしてるみたいなものだよね。あれ、なんだ、夢だったのかあって話。いい年こいてなかなか大人になれないや。