日本人か?と聞かれてそうだよと。

 Japanese is beautiful なんてこと言われても、そんなに嬉しくないのは、じゃユーはアメリカン・イズ・ビューテホーなんていわれて嬉しいか?という話。ジャパニーズにだって顔も個性も特質もあるのよ。自国を出て異国の地に降り立てば、私はAsianという記号で、Japaneseっていうキャラクターになる。日本にいたら西洋臭い顔も、当の西洋に飛び込めばとことんアジアの平坦顔。でも、欧米顔だって、凹凸が激しいってだけで、みながみな黄金比を持つ彫刻のような顔面かって言ったら、画塾なんかでこの顔を描いたら、おまえのデッサンは狂ってる!って怒られるなぁって人がほとんど。綺麗な人の方が少ないっていうのはどこの国だって同じだよねって同行者と顔面比率の観察を。
 でもたぶん、自国にいて自国民に囲まれて自国民である状況が当たり前の日々に身を置いているとき、私だって同じことをしてる。インドの女性って綺麗よね。仏国の女子ってオサレよね。韓国の女性って気が強いよね。ドイツの女性ってごついよね。オージーって単純そうよね、ロシア人女性って30歳過ぎたらヒゲがはえるんでしょって。しかしそもそも、普通に考えて見も知らぬ人間に会話のきっかけとして容姿を云々言うなんて、どこの国でもろくな人間じゃないという話。
 デトロイトまでの機内で隣だったインド系の英国人とお喋り。ニューヨークは6年目だという彼は日本が大好きって。Tokyoから来たのか?と言うのでいいやKyotoだよって答える。日本びいきという彼も、キョート?知らないなぁ。って。そういうもんだよね。
 トーキョーからエキスプレスで2時間だよ、是非いつかおいでよキョートは美しいところだよって嘘をついてみる。京都の美しいところは点在する寺であって、町並みはごく僅かな一角を除けば、がっかりするくらい猥雑。猥雑さこそがアジアらしくて味わいがあるといえば、だったら中途半端に猥雑なところよりも、新宿の猥雑さの方が面白いし見てもらいたいと思ってしまう私はいまだに関西人になりきりたいと思えていないのかもしれませんね。町の歴史をうかがえるものなんて探さなければ見つからないし、古都なんていっても、とてもじゃないけれど世界の観光地と肩を並べられない。
でもでもそれでも、日本が好き。日本人でよかったって思ってる。WASPのミドルアッパークラス以上に生まれないならば、アメリカは素敵な夢を見せてはくれない。でもでもNY好き好き大好き!いつまでニューヨークに浸ってんだよごめんもう少し浸らせて。