この中年男ども

mxoxnxixcxa2006-08-26

 中年男に限らずだけれど、まず自分に自信がない人間ほど虚勢を張る。でかくでかく見せるために。
 声がやたらでかい男。やたら高圧的で偉そうなのに、ちょっと反論すると黙る。しかし弱気な者にはめっぽう強い。でかい声で己の小ささをカバーしてるんでしょ。こういう男が一番女々しいから気をつけて。お酒が入ると「本当はもっとスゴイボクは、あまり正当な評価を受けていない」みたような愚痴を吐いたり、「本当は繊細なボクをわかって欲しい」みたいなふやけたことを口走ったりもするタイプだから。いつも強気なボクが、こんな風に弱さを見せれば女子の母性本能をくすぐるに違いないとでも?
 小娘(中年男にしてみれば“おばさん力”を発揮する前のオンナはみな小娘)相手にエラぶる中年男はわかってる。自分が本当は大したことない人間だって。でも認めたくないんだよね。でもって、もっとすごい力を発揮できるハズとも信じてる。
 何でも知ってると思われたい男。これは「先生」と呼ばれるジャンルにやたら多くて、それが文系だともうアウト。「○○って、△△だね」とかなんとか、何かについての感想を言っただけなのに、まずそいつが口を開くときの第一声が「いやぁ」これ。「○○はナントカだからなぁ」と知ったかぶる。で、横で同じものを覗き込んでいたりするときなど、訊いてもいないのに「はぁはぁ、これは○○やなぁ」とひけらかす。「ほほう、ああやっぱりナントカナントカなんやなぁ。□□の影響やなぁ」と、こちらに聞かせているという意識を持っての独り言を吐く。
 で、食事をしながら目を閉じて上を向き、首を傾けて言う。「コリアンダー」って。きいてねえよ。むしろ、適当に言ってるだけだろう?コリアンダーの味してますかね。ふんふんふんと一人相槌を打ちながら、「このパンは米粉が入ってるな。…なかなか」と大げさに感心して、この店をボクは認めてあげよう、みたいな態度をして見せる。入ってるか?米粉。普通の白パンじゃねえの?私はこの人を脳内で公爵(講釈)と名づけて、講釈の道化師としてウォッチすることで愛し所を見つけました。ああ、公爵は今日も高貴だな、とか。だから、香辛料まで当てられる、食通のボクを演出してんだろう? こう見られたい自分を演出することでしか、自分を確認できないんだ。
 兎にも角にも、エラぶりたい中年男に共通しているのは、何か言えばまず「いやぁ」か、「まあねぇ」か、「そうだよ」。たとえ知らないことでも、ひとまず「そうだよ」。ここはその相槌は違うだろうという場面でも「そうだよ」。例えば、「○○の作品が好きだ」とかなんとか言うとする。エラぶり男はまず「そうだよ」。その即答で、ははぁ、知らなかったのだな、ということが伝わってしまうというのに。厄介なのは、このタイプが実際物知りでインテリも多いという一点。しかしこの自負が、控えめならば尊敬されるはずのボクを暴走させるのだ。
 でもね、こういうボクちゃん達が待っている言葉は一つ。「へえーそうなんだー」これ。ボクを認めて欲しいわけ。「すごーい」をつければなお喜ぶけども、過度の持ち上げはこいつらの暴走を生むので、ここは控えるべき。自意識が肥大化したボクちゃんは、自分で自分を充足できるほど、自分に自信を持ってない。なんとなれば、自分が下らんやつだと薄々気が付いてる。望んでいるほど、周囲から尊重されていないことを憂えてもいる。だからなおのこと、ほうら、ボクはここにいますよ、何でも知ってるのですよボクは。と自分では補い切れない自尊心を満たしたいわけ。くっだらないわね。人生経験の浅い私のような乙女だから思うわけ。もう尊敬せずにはいられない人たちは、みな一様に謙虚で、対等に接してくださる。
 イイオンナを目指したい乙女は、こういうエラぶり人間と正面から対立したら、損するだけ。こいつらは案外気が小さいくせに自己愛が強くてプライドが高いから、後々まで恨まれたりするかもしれない。適当な生返事と、日本人特有のアルカイックスマイルでもっていい気分にだけさせておけ。そうして上手に転がすの。わかってる。わかってるけども、むっとしてしまう私もまた人間が小さいなぁ。カワイイ!と思えるくらいまで成長したいです。まだまだ修行が足りてないんだ。