『田園に死す』寺山修司 

田園に死す (ハルキ文庫) 長子 地平にあこがれて 一年たてど 母死なず 二年たてども 母死なぬ 三年たてども 母死なず 四年たてども 母死なぬ 五年たてども 母死なず 六年たてども 母死なぬ 十年たちて 船は去り 百年たちて 鉄路消え よもぎは枯れてしまふとも 千年たてど 母死なず 万年たてど 母死なぬ ねんねんころり ねんころり ねんねんころころ みな殺し

 のしかかるどろどろ母をぶっ殺せ妄想で。そういうときに思い出す本がいくつかあるけれど、輝いているのが圧倒的に母殺しのプロフェッショナル、寺山修司。この人の過剰なまでの状況演出は、いもしない弟を殺してみたり、部屋に首を吊るつもりのロープをかけたまますごしてみたりと、どこまで本気なのか分からぬ面白さが、好きな人は好きで、嫌いな人は嫌なのだと思いますが、私は非常に好きでした。
かくれんぼの鬼とかれざるまま老いて誰を探しにくる村祭り
 これなんかは、作りこんだ嘘である創作和歌なのに、どうしようもなくこぼれ落ちてくる寂しさがあって、作者の孤独に触れた気分。とことん一人ぼっちだ。どうしようもなく寂しいよ。
寺山修司青春歌集 (角川文庫) 私が持っていたのは上の猛烈に装丁がダサい文庫だったのですが、近年こんな素敵な装丁になって、さらに代表作を網羅して出ているようです。どうなのこの乙女心をヒットする素敵写真。