鬱を振り回すんじゃない

Stephanie__Beliveau_Melancholia

 黙ってて。でも察して。聞いて。でも望んでること以外は言わないで。そういうことなのでしょとは分かりながらも、困り果ててうんざりする。このぎずぎずした空気この感染力。意味もなく人生に失望しているのでしょ。春だからだよね悪気があって周囲まで追い詰めているのじゃないのだよね。
 自分はダメだ生きているのもイヤ。そんなことないよ大丈夫と言ったとする。そうしたらなんだ、「何が大丈夫なのだ。この苦しさは誰にも分からない。何も知らぬクセにいい加減なことを口だけで!」とあたかもこちらを責めるかのように返されるんだよきっとたぶん絶対に。どうして欲しいのだ。一緒になってもだえ苦しめと?生き苦しいのはユーだけじゃないだろう?
 鬱々に引っ張られたくないと思うのは冷たいのか。理解しろって、自分の言い分だけぶちまけるものじゃなかろう。世界はユーを中心に回ってんのかよ!と聞いたようなことが頭をかすめる。ひどいわかってないどうせ私なんて。この爆弾でまるで自分だけが不幸みたいに。理解を求めるならそっちも他者を理解しやがれ。
 春になるとその人は毎年セロトニンの具合が云々して、「私なんか死んじゃえばいい。私の人生ってなんだったのだ。もう嫌だ何もかも嫌だ。ここではない何処かに行きたいここに居たくない」と答えようのないことをぶちまけて周囲を苦しめる。よくいるよねそういう人は。
 そんな風に様子がおかしくなると、こちらまで乱されてしまう。全くの他人ならふうん、そうね、わかるわ、無理しないでねとか言って春が過ぎ行くのを待てばいいんだけれど、近しい人間だと頭の中まで入ってきてかき乱すのでこちらまできつい。過剰な喜怒哀楽で周囲を振り回し、自分まで感傷過多な己の感受性に振り回されて苦しむんだから、なんて困った子ちゃんなのだ。
 兎に角そんなふうなことは嫌なので、実生活では出来るだけ他人様を煩わせたくない、困らせたくない弱さを見せたくない、深刻をぶちまけたくない、うざい奴と思われたくない。なるべく自分はリアルな他者に向かって絶望をぶちまけてすっきりするなんてことはしないよう、何となく日々心がけているんである。ゆえにもなかでキモ暗いウェットなくさくさをぶちまけて、イタいエントリーばっかり増えていくんですけども、今日も今日とて私はかなりキモいですが、ここはもなかに穴掘って「王様の耳はロバの耳」ブログなので、キモがって良いです。
 鬱を武器みたいに振り回すなんてずるい。鬱状態でイラついているなら、無神経に人を傷つけたり責め立てたり、くさくさを撒き散らしていいのだろうか。いいえ違うわ甘えんな。他人は他人を救えないんだから、自分で自分を救うべき。なんてことは当人には言いません。鬱はそんなに偉いのか?察してくれ気を使ってくれ労わってくれ。周囲まで鬱々させていることに気がつきやがれ。とは言わないで、そのような念だけ送っておきました。こっちだっていっぱいいっぱい。そんな大人の余裕は持ってねーんだよ!抑うつ状態の苦しさは知ってる。だからって周囲も同様に苦しめていいわけじゃない。
 往々にしてこういったマイナスの感情は強力に伝染するので、そういう時は息を吐きながら考える。私は強い強い強い平気大丈夫。こんなことはたいしたことじゃないんだ。