二次元の少年は無味無臭

病院ギャラリー―717days 2001‐2003 四谷シモンの『解剖学の少年』に胸を打ち抜かれて以来、人形にはまったといえるくらいに、シモンの少年人形が好き。生の無い存在が恍惚の表情を浮かべて、自ら胸を開いて作り物の内臓を晒しているその姿を見ていると、人間の肉体なんてこの程度のものなんだと、己の存在の儚さを見せ付けられているような気がする。
 少年の美しさっていうのは、たぶん性別の無さにあるんじゃないかと思う。変声期を迎えていない少年は何かこう、少女の亜流というか代替品という感じさえする。少女の観念を分解すると、聖女と娼婦が交合された性の匂いがするのに比べて、少年は無臭で希薄な感じ。私が女子であるせいか、尚更実体のない存在のような気がする。創造のフィルターを通った少年限定でね!そこら辺の少年なんて五月蠅いガキです。虫とか平気で食べそうだし。
 なるとという方の少年人形もすごく綺麗で、この人の作品はどちらかというとビジュアル系とか少女漫画的な雰囲気が強くて、もろそっちかな…みたいな作品もありつつ、恋月姫に影響を受けた人ではないかという印象。人形独自の観念性よりは、アンティーク的な造形美にうっとり。性別を失くした半眼の少年達はとにかく美しいのです。美少年の永遠のアイコンたるビョルン・アンドレセンの『少年アリスシリーズ/tajio』人形なんかもあって、興味のある方は「なると 球体関節人形」あたりで検索してみてください。
 そしてああ、これが現在のビョルン・アンドレセンみたいですよ。「時間よとまれ!お前は美しい!」 フィルムというのは刹那を写し取り、その輝きを永遠にしますね…。渋いおっさんで、私は嫌いじゃないです。同一人物かよとは思いましたが。ジュリーだって永遠じゃない。ビョルンだって一瞬の輝き。儚いな…。