『ネバーランド』

ネバーランド [DVD] そんなこんなの『ネバーランド』。なんか中途半端つまらん退屈。しかも人は始まって早々にソファーで寝始め、そうはさせるかこればっかりは最後まで見届けてもらおうと思い、起こし続けた。観終わって「面白かったね、涙が止まらないよ」と言ってやると、微妙に微笑んで「おかしいな、面白そうだったのに」などのたまっていましたよ。
 主人公には共感できない。ファンタジーシーンもいまいち。もっときちんと現実の痛みを描くべき。そうじゃなきゃ、ファンタジーへ逃避する意味が曖昧になる。浮世の痛みを伴わない唐突なファンタジーの挿入は、単なるお気楽でお馬鹿なシーンにしかならない。1から100まで隙のないファンタジーを作るならいいけど、現実にファンタジーシーンを混ぜ込むなら、それ相当の意味合いが欲しいよ。
 それに、大人になんてならなくていいんだという部分も薄い。ピーターパンは何故大人にならない?大人にならないってどういう意味?そこが薄い。何となれば、大人になるってことはいろんなことを忘れていって落としていって、あらゆる物を失うことで諦めや処世術を身につけていくって事なわけで、この程度の人間描写でヒューマンドラマなんて浅い。大人になるのは浮世のやりきれなさと対峙するって事でしょ。それやこれやをきちんと取り込んでおいて、だからこそ、大人になんて急いでならなくっていいんだと言うべき。幼稚な変人オトコと可哀想な父なし一家との心温まる交流って言われてもなあ。
 登場人物全員、中途半端。何故そうなのか、何故こういう態度をとるのかなどが「いや、だってこうだからさ」みたいな設定のみで、説得力もない。人間と人間は何故すれ違ってしまうのか。何故生きることは侭ならないのか。そういう、人間同士のどうしようもない部分をファンタジー逃げ一本でやっつけてしまうと、子供向けにも大人向けにも中途半端なものになる。「ほら、ここがネバーランドだよ」って、映像、ダサ。
 そこへ来て子役までもが可愛くないとくれば、もう一体なんだったのだ。ピーター役の子、あれでよかったん?どこかこう、貧乏臭いじゃないですか。もうちょっとお人形みたいな子を使えばまだお涙頂戴シーンが…いや、なんともならんわね。ジョニー・デップもいまいちだし、大好きなケイト・ウィンスレットもあまり。おばあちゃん役など、設定が荒すぎて話にもならんわ。デップの奥さん役のラダ・ミッチェルは、なんだ、エマニュエル・ベアールに似ているの?と思ったのは幻だった。これは素敵なんだけど  これはちょっとなあ。  妖艶さは皆無。まあ、豪出身らしいっちゃらしいけれども。 
 ひとこと「単純。つまらん。浅い。あざとい」と言えばいいところをいちいちこんなにくさくさをぶちまけるのは、ここ最近ずっとまともにソファーに落ち着いてお菓子とか食べながら映画を堪能するなどの素敵な時間が持てずにいて、久しぶりに観た映画がこんなクソだから。いやこの映画だって普通に見たら、中途半端だけど泣ける映画なのかもしれませんよ。単に私がかさついているからなの。