下駄でカレーを

 高いバッグを持ちながら靴は1万円とかいうしょぼいことをするのは、なんていうか最高にダサいと信じ込んでいるので、意地でもヴィトンは持ちたくない。身分相応でGO。だいたいシャネルスーツなんて、40超えて貫禄ついてからが一番かっこいいわけで、やたらめったらブランド品で自分の価値を上げようとしている女子が恐い。完全にグループ違いな人種だと思って、恐くて見えないふりしてしまう。モノグラムって、バッグばかりが主張して、全体で見ると野暮ったいと言うかお洒落な感じがしないのはどうしてなんだろう。
 とまあ、ブランドに興味がないのと、そのお金があったら他ごとに使ってしまいたいのと、流行に乗り切れないのと、乗りたくないのと、お金自体がないのとが相まって、ファッションが段々自己流を極め、通り越して趣旨がよく分からない人になってきた。
 夏場はスカートでもジーパンでも、きちんとした服装の時以外は全て下駄を履いているのだけれども、そのブームも今年の夏で3.4年にはなる。コレクションも結構な数になってきた。下駄へのアツイ思いは書き出せば長く長くなるので今日はよしておくけれども、その下駄がとうとう夏場の枠をはみ出し始めてしまった。
 先日、久しぶりの妹とちょっと昼ごはんでもというとき、足元を見て突っ込まれた。「さすがにそれはどうなの」 その日の私の服装は、ゴージャスがぬけてダルいパーマ頭にアナスイのニットベレーにzuccaのカーキ色のコートに、ジーンズに足袋ソックスと下駄。「もうちょっと考えた方が良いよ」と妹。「なんかだんだん普通におかしい人みたいになってきてるよ」
 老いては子に従え。年老いた私は大人しくうら若き10代の妹のご指摘を受け、えんじ色の鼻緒をやめて、黒い鼻緒のヤツをチョイスした。さあこれでインドカレーを食べに行こうよ妹ちゃん。妹は静かに微笑んだ。なんかもうよくわからないや。お洒落ってなんなんですか。