『フォレスト・ガンプ/一期一会 Forrest Gump』

フォレスト・ガンプ 一期一会 スペシャル・コレクターズ・エデ [DVD] というものすごうく長い前置きの後に、今さら紹介しておきたいのは映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』です。個人的には、邦題の“一期一会”はいらなかったと思うんですけれども、この映画は本当に今さらながら、「映画?まあ観る方かな」という方ならまず何度ともなく観たことがある作品だとは思うのですが、私とて幾度となく観た気もする映画。
 まず映画好きは必ず通る道、「ハリウッド?あれはクソだよ。エンターテイメント?商業作品なんてくだらないね」という時期は結構な確率であったと思いますが、一周回ると、映画というジャンルそのものを純粋に愛することが出来るようになるんである。思春期なんかに映画が好きだったりすると、どうしても“カンヌが大絶賛”という踊り文句しか信じたくない、アンハッピーエンドこそ真実だ、現実の痛みこそがリアルだそれを映画に求めるのだという時期を過ぎて、ある時期からふと、映画は2時間程度の嘘なのだという境地に達するわけ。私はそうでした。
 そこで『フォレスト・ガンプ』が染みてくるのです。なんと大掛かりな大河物語なのだシャレが利きすぎている。けれど、映画は所詮嘘なの。計算を尽くした嘘だからこそ人間の姿を描ける。そういう作品を観た後は必ず、「ああ、やっぱり映画っていいわぁ」って思えるんである。
 この物語のなかで特に心惹かれるのは、喜怒哀楽の稀薄な淡々とした主人公フォレストをストーリーテラーに、彼によって語られる登場人物たちの姿だと思う。ヒロインのジェニーやダン中尉は、自分ではどうしようも避けようのなかったことや、または自分で蒔いた種によって、何度も人生につまずき傷ついていく。彼らは自分自身や生そのものを憎みながら、それでもやがて再生を遂げていくのだ。人間は何度だって生き直すことが出来る。
 この映画が登場人物全てに与える優しい嘘は、なんとなく胸の辺りをこう、じわぁっとさせるんである。声に出して言ってみて出来るだけ正しい米国英語の発音で「Life is like a box of chocolates.」
 なんて語呂の良い台詞だ。人生は箱入りチョコレートという博打。さあ飛び込んで、次々お口に入れてみろ。