お江戸がなんだってんだよう

 今月が終わってしまう前に、今月一番の幸せ体験を書いておきたいのと思ったら月が変わっていた。古都に暮らしてもう何ヶ月。南座ではまだ一度も歌舞伎公演が催されておりません。銀座…遠いわ…。往復のチケットも、歌舞伎座のチケットも無駄にしていいからじっとしていたいだるいしんどい面倒くさい。という自分を鞭打って、こういうときこそ動き回れなきゃ女が廃ると、華のお江戸へ行ったのも結構前のこと。
 別に東京に執着はないんだけれど、外から眺めると、この都は実に文化の密集地域、情報の坩堝、娯楽の集合体であることが分かる。しかして人も多いし物価は高いし広いのに狭いし。それでも東京嗚呼東京。東京に居ないだけで、どうしてこんなに取り残された気分になるのか、これは東京人ども、離れてみたら有り難味がわかると思うよ。懐かしいよう懐かしいようと脳内で涙を流しながら新宿の雑踏をそぞろ歩き、銀座の通りをよちよち歩いて歌舞伎座へ。どれくらいぶりなのか、ああクソ狭い固い座席。素敵だ。Tokyoは素敵だ。