神の道化師

mxoxnxixcxa2006-01-29

 これは本当に誰どんな人にも分け隔てなくお勧めしたい大好きな絵本なので、今すぐ注文したら良いと思います。
 ソレントの孤児であるジョバンニがジャグリングの才能に目覚め、イタリア中の観客を沸かせる人気道化師となり、やがて年をとり浮浪者へと戻り、懐かしいソレントで最期を迎えるまでのその一生を、素朴なキリスト教信仰とともに描いた話。
 与えられた才能を生き、人々に愛され、年をとり衰え、醜くなり、飽きられ疎まれるようになる。どうしてかこの絵本を読むと必ず眼から水が出てくるのは、人間のささやかな栄枯盛衰や孤独を、生き老いて死ぬという避けようのない普遍を、言葉に出来ない人間の存在の悲しさを、老年期のジョバンニの表情が黙って物語っているからだと思う。
 これは作者のトミー・デ・パオラが、フランスに伝わる民話をベースにした話なんですが、「クリスマスの奇跡」なんていう薄っぺらな絵本じゃない。かといって未就学児の頃にこの本を読んで、人間の存在の痛ましいまでの悲しさを感じていたかというと、そうでもなかったんだと思う。かわいそうな話だとは思っただろうけれども。大人になってしまうと、「道化」という存在の持つ固定概念みたいなものも絡まってくる。これが、無駄な感慨も無くお話を楽しんでいられた頃に比べると、知識や概念を得た分、何かを失いもしたんじゃないかという気がしてくる。けれど、ジャバンニの最期が、本当はとても幸せなものなんだということもわかるようになる。
 無駄の無い線も色彩も本当に綺麗で、どの絵もどのページも素敵。とにかく何かこう来るものがあるので、知人の出産祝いに、友人の誕生日プレゼントに、大事な人への贈り物に、自分の本棚にと、だから今すぐに「神の道化師」を注文したら良いと思う。「ぽるぷ出版」