『ロリータ』

ロリータ (新潮文庫) ロリコンて、もはや少女愛のバイブルたるウラジミール・ナボコフの『ロリータ』とはなんだか別ものに思えるのは、やはり文学というフィルターを通ったいるからなのかも。
 小説はものすごく魅力的な文章で、細かな描写で老いの醜さや存在の悲しさを焙り出す傑作だった。葛藤や疑心や企みやもろもろの感情の揺れが流れるようなセンチメンタルな文章で続いていく。おっさんの変態妄想を物悲しく時に可笑しく綴り、コックの例えもまた文学的で絶妙。この俗悪な仔猫ちゃんは何なのだ。
170299102ロリータ [DVD] 映画はキューブリックによるモノクロ映画と、エイドリアン・ライン監督のとがあって、両監督の解釈と表現の違いを見比べるのも楽しい。’62年という時代もあってかキューブリックの方はやや淡々としている感じ。ロリータちゃんの小悪魔的な魅力は後者の勝で、ジェレミー・アイアンズがさすがだった。
 でも映像は視覚ゆえに限界があって、活字の深さに勝てない事もあるという例でもあった。