うっとりするこの感じ死体
もうずっと欲しいな欲しいよと思っている写真集『死体のある20の風景』イジマカオル(伊島薫)です。欲しいよー欲しいよー。単なる死体写真が見たいなら、そういう嗜好の方向けのマニアックな凄い写真集も多々あるけれど、そうじゃない。この写真集は凄惨な殺人現場を演出して撮られた偽死体写真集で、死んでいるのは女優など有名人20人。
さらにこの写真集の最もブラボーなところは、これが有名ブランドのファッション写真集であることなのです。このフェティッシュ心をくすぐる隠微なシチュエーション。死はどんなものであれ、耽美でうっとりとするようなものに決まってるという乙女心をスマッシュヒット。欲しい!
私が見たことがあるのはVivienne Westwoodを着た篠原涼子が男子トイレの床にヴィヴィアンのバッグとジェリービーンズまみれでぶっ殺され放置されているのと、グッチを着た松雪泰子がバスタブの中に倒れているのと、かたせ梨乃が汚い道路に無様に転がっているなどなど、微妙な生っぽさがほんの少し加味されて、「女優が美しく死んでいる」というシチュエーションに有り勝ちな陶酔美だけではない面白い写真なのです。光琳社出版という会社は潰れており、ゆえにこいつは絶版本。なんで今更入手できない写真集を云々言っているかって、今ヤフオクで出品されていながら、その値段が定価の2倍近くでスタートしていて、誰も入札していないから。そんな金あるかー!
なので、この写真集の続編と謳う『最後に見た風景』じゃあこれを買うかしらと思えば、ちょっと懲ってるというか、こなれた感じがするというか。女優それぞれが選んだ最後の死に場所で、これまた有名ブラントに身を包んで死んだフリをしていて、またも入手できなくなる前に買っておこうと購入はしたもののなにかこう、思いは前作に向かって羽ばたいてゆく。生きた姿に興味がもてなかった長谷川京子がドブにはまって死んでいたりして初めてハセキョーにときめいたりしつつも、宝物にはならぬ感じ。誰のとはいわないけれど、つまんないのもいくつか。
そもそもが死人の名前を列挙すれば、連ねる面子もボリューム面でも物足りない。けれども、女優を死体にして写真に収めるなんていうことをライフワークに独走する伊島薫のこの偏執狂チックな姿はステキだ。
『死体のある〜』 小泉今日子、秋川リサ、坂井真紀、高橋恵子、永瀬正敏、細川ふみえ、山口智子、広田玲央名&吹越満、篠原涼子、真行寺君枝、本木雅弘、松雪泰子、かたせ梨乃、ミッシェル・リー、富田靖子、桐島かれん、稲森いずみ、鈴木保奈美、鶴田真由、佐藤藍子
『最後に見た〜』板谷由夏、タニア・ドゥ・イェーガー、夏木マリ、UA、井川遥、ともさかりえ、富永愛、長谷川京子、小池栄子、加藤あい、中島美嘉
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