ああ。ああばかばか

 日曜の朝ですもの。ゆっくり起きるのだわと冷蔵庫を開ける。ああ29日、今月もあと3日かぁと思って何かが横切った。え、あれ?29日?日曜日?眩暈がしてぶるぶる震えた。今日は29日。福助出演の「題名のない音楽会」。信じられない。見逃したなんて受け入れられない。すっかり忘れていたなんて絶対に信じない。何で録画セットしていなかったのだろう。何故って忘れていたからだ。
 なんでさ何でなの。見逃すはずがないと思い込んでいた。あわてて新聞に手を伸ばして脱力した。やはり今日なんじゃんどうしようどうして?良い子にしてきたのに。バスでお年寄りに席を譲ったのに。どうしてこんな事態になったのか。
「なにかいけないことをしなかったかい?」と脳内小人が囁く。えぇ?何もしてないよ。「ほんとかなぁ。ちょっと自分の胸に聞いてごらんよ」 そこでちょっと胸に手を当てて揉んでみた。やりきれぬ。
 そこでインターネットこの便利な文明の利器で失ったものを埋めるんだと思い、見た人の感想くらいは知りたいよと画面を見つめるも、涙で霞んでぜんぜん見えない。どうも和製カルメンに変身してハジケていたというお話は観覧に行った方のブログで拝見していたけれども、一体全体どんな放送だったの?涙をぬぐって検索をする。そしてページを開いてもう一度涙を拭く。悔しくて何も見えなかった。文字が涙の海で踊っていた。
 いいやもう見ない。人様の感想を拝見したところで観られるわけじゃなし、悔しさが倍増するばかりだどうせ。ばか。もにかのばかしねとうそ泣きをしながら。古典の福助が好きなので、いいんだ邪道なものなんて見なくて良かったんだよと言い聞かせる。頭の中で小人が無理しちゃってさと慰めた。