『涙石の恋・ジェニファ』

涙石の恋 ジェニファ [DVD] これは群を抜いて、ものすごい自由な映画。あちこちに大人の事情で出演するLux以外には、プロットやストーリー性などといった、ささいなものになんか縛られない。ラブさえあれば全てよし。自由気ままな成り行き。ここまで筋が破綻しておれば、素直にすごいと思える。納得できる。ジェニファの、「タ・カ・スィー」の声に思考停止にされ、完全に置いてきぼりを食らっていることを悟った頃には、プリティーすぎる「LOVE」の文字に全て煙に巻かれてしまう。なに?なんだったの?
 きゃあきゃあカワイク、トウモロコシ畑の中を追いかけっこするメルヘンカップル。途中、意味もなくロミオ&ジュリエットの名台詞を吐き、ブンガクするジェニファ。しかもシェイクスピアも泣くような酷い和訳で、輪をかけて意味不明なため、完全に空中分解。正しくは「名前って何かしら。薔薇を違う名前で呼んでも、甘い香りは変わらないじゃん」
 え?そうくるの?さっき、強引にタカスィの名前聞き出してたじゃん。少年Aにそれ言ってやってよー名前なんて関係ないってさぁ。むしろジェニファがつけてあげてよ新しい名前をタカユキさんって。もういい。これはこれで完成された駄作なんだと思う。安心して身をゆだねれば終わってしまう。
 主役のはずのジェニファはあまりに輝きがない。メイキングではかわいいのに、本編で殺されてどうする。エンケン坊主いけてた。高橋ひとみ綺麗だった。そして終始、脇役であるはずの山田が一番ブリリアントに撮られている。監督談「とにかく山田君の美しさをどう撮るか」云々。その通り、はっきりいって山田隆志孝之はビューティフルだった。もっさりの「も」の字もない。つなぎに麦藁帽子が眩しく、鍬を担いでも輝いている。戻れよこの頃に。痩せてみてちょっとでいいから。なのに、メイキングではインタビューもなし。ほとんど無言で虫とカチンコと戯れているだけ。まじすか。なめとんですか。煙草吸いながらにやにや喋るエンケンが見れたからまだいい。