おかえりやす

 何で京都へって、所用です。長い滞在だった。中一日だけ自由に京都探索。ここぞとばかりにスケジュールを組んで疲れはてる。
 京都の人は本音を言わないという噂。私は何度か、相手の本意を探らんければならぬ場面に遭遇した。「じゃあ、明日、来はります?」「え、お邪魔していいんですか?」「ああどうぞ、来てください」「あ、じゃぜひ」これは、本当に来ていいという意味だったのだろうか。
「もにかさん、コーヒー、飲まはります?」私は即座に「あ、いただきます」といってしまった。後で思い出した。ここは京都。「まあ、あがってぶぶづけでもおあがりやす」なんていわれても、絶対に「あ、どうも。それじゃ」なんて言ってあがりこんではだめ。絶対にだめ。生粋の京都人と話す時は、相手の言わんとしていることを察して察していかなければ、「無粋なお人」になってしまう。私はすっかり忘れていた。さまざまな場面で、「え、いいんですか」「ええですよ」「ありがとうございます。じゃあじゃあ、お願いします」なんていって、かなりお世話になってしまった。私はブスイナオヒトなのかも知れない。こわい。京都こわい。なぜ本音を言わないの。