スリング・ブレイド

スリング・ブレイド [DVD] 気分がくさくさするのでレンタル屋に立ち寄った。何か「ああ、いいな映画って」と思えるようなものが見たい。ビリー・ボブ・ソーントンが監督をしていたなんて、知らなかった。『スリング・ブレイド』をジャケ借り。
 ストーリー展開は淡々として、ほのぼのとする人々の交流はのどかで素朴で寓話的。なのにずっと微妙な緊張感がある。全編にちりばめられた「死」や「殺害」モチーフや台詞、そして徐々に主人公と男の子の関係が親密になるにつれ、何か嫌な予感。しかも、その予感どおりになって終わってしまった。だめ、そっち行かないで!と言いながらそっちへ行ってしまうのを止められない。
 障害者ものの映画は、ある程度のハードルを越えていれば、演技も作品自体も社会ものとして一定の評価を受けやすい。でもこれはあざとい感じはなかった。なんと言っても、アンジェリーナ・ジョリーの元夫・絶倫ビリー。別人かと思ったビリー・ボブ・ソーントンが良かった。子役も、そのママも、その恋人も。なんかどうしようもなくやり切れない。くさくさする気分は治まったが、なんだか考え込んでしまった。
 神の存在意義は。罪とはなにか。魂の不浄とはなんだろう。正しいことの定義って何?なんで人生はわくわくすることばかりじゃないのだろう。楽しいものばかりに囲まれて暮らしたいのに、どうして幸せに生きることは簡単じゃないのか。切なくてたまらない。
「映画は、所詮2時間程度の計算された嘘。しかしその計算をつくした嘘は、時に現実以上に真実に触れる」といっていたのは、誰だったか忘れた。カールなんて嘘。カールなんて現実にはいないのに、カールには幸せになって欲しかった。ああ。