女が嫌う女

 トップを走るのが、さとう珠緒。ということに作今はなっているらしく。現在この人を見る限り、男に媚を売っているぶりっこ、というよりむしろぶりっこキャラを使っている芸人ではないか。
 今のさとうが「もぉう、なんでですかぁ、ぷんぷん」 なんてほっぺを膨らまして、顎を引いて、ウルウルした目でじっと相手を見据える時。さとうが考えているのは「ぷんぷんキャラを開拓したあたしってオイシイ」などということだと思う。
 でも「ぷんぷん」。これは実践となるとかなり難しい。まず、そうやって返答せんければならぬようなことを、あまり実生活で言われない。でもでもやってみたい私だってぷんぷん。試しにやってみれば、女に嫌われるより先に心配されてしまいそうだ。なにさぷんぷん。
 もうひとつはがんばれば出来そうだ。会話の途中、隣の男性の腕の一部に触れ、その顔を覗き込むようにして。「えぇー、そうなんですかぁー」。これ。会話相手への返答のスタイルを持つ「ぷんぷん」に対し、これは相槌。なんでもいいから、例えば「おれさぁ、朝寝坊しちゃってさ」なんていう言葉にもすかさず喰いつけ。「えぇー、そうなんですかぁー」「だから駅まで走ったよ」「えぇー、だいじょうぶでしたかぁー」「ぎりぎり間に合ったよ」「えぇー、すごい、ほんとうですかぁー」
 瞳を潤ませていつか試してみたらいいよ。たぶん相手は一瞬考え込んで、「あ、さとう珠緒の真似?」とか言ってくれると思う。「もにかタン、カワイイ」じゃなく。
 しかしながら、世の男性の種の優越と保護本能をくすぐっていた技が、単なる芸人の芸になってしまった今。そんなさとうは最早嫌いようがない。さとうは徐々に、女に嫌われもしない女になる。嫌われる価値を失したら、ぷんぷんは芸として威力を発揮しない。芸人の芸が、本人の器を越えて世間に広く認知されてしまったらあとは自然消滅。