『理由』日テレヴァージョン

 この前日テレで放送していてなんとなく録画していた『理由』を観た。どうも映画はクソだというので未見だったし、まあタダならという思いと岸辺一徳の名前が一番上に載っていたから気になったのだ。出演者がもう考えられないくらいに豪華だった。しかしそれだけだった。
「あの日はこうこう、こうだったんです。だからこうこう、こうでした」みたいな、完全にその人になって回想している演技を求められるとき、演者個々人の力量の差があまりにはっきりとしてしまい、ど下手と達者の違いが感じられて面白かった。役の人物の人生や生活をそのまま生きてみせることは、本当に達者な役者にしか出来ないんだなとしみじみ感じた。泣いたりキレたり、そういう激しい感情を伴う演技がかった演技は大して難しくない。普通の人間を自然に演じられる人は凄いなあ。と思いながら、久本雅美と一緒に
わたし、エレベーターを降りてここを通り過ぎようとしました。その時、わたし、みたんです。」とかを自然に言えるかどうかを試してみて、その難しさを身をもって体験する。理由 (新潮文庫)その程度のドラマだった。凝ったつくりにしようとして迷走した感じ。原作を読んでいない人は分かったんだろうか。
 マニキュアを乾かしながら眺める途中で「!!」といきなり目が覚めた。裕木奈江じゃん!見つめた裕木は、声変わりをしていた。えっと…あれ?中学の頃、裕木は確か妖精のような女子だったはず。ウィスパーボイスのフェアリーだったような気がするのは思い違い?ドスのきいた鼻声の裕木を見つめて、月日は流れるよ。と思うことにした。そういえば私だっていつの間にやら年下から「おねえさん」と言われる年齢。もうもう、一体何だってんだ。