乗ってみたら超面白かった『電車男』

 純愛純愛言われているので、なんだかどんどんレンタルでいいのじゃなかろうかという気になって他の映画に行っているうちに、公開何週目?ドラマの1話を見て、その全てが過剰すぎて付いてゆけず、映画を見るのも正直ますます気が進まなくなり、今日も違うのに行こうかと考えたりもした。
 しかし何とも可愛らしいファンタジーだった。適度にポップでテンポがよく、何よりテンションが高すぎないから、このドリー夢いっぱいの世界に普通についてゆけるどころか、超面白かった。戦闘シーンとかよく意味が分からなかったけれど、両腕をあげて死ぬ様に、プラトーンをキャッチした。
 山田孝之は、ルックスだけ脱オタクしても中身はそう簡単には変わってはいけぬ電車を好演。変身後の方がイケテなさが際立って見え、それがよかった。演出もあるんだろうけれど、山田の演技は芸細かく丁寧だった印象。純愛モノといよりも、恋心を通じて社会不安症チックな人間が脱皮する話。だから恋愛モノに興味がなく、オタクにも接したことがなくたって応援したくなる。とか言いながら、この映画を見ながらずっと気になっていたのは、「百弐」ってなんだろうということだった。
 しかしエルメス。やるなぁエルメス。凄腕童貞キラーの天然ぶりっ子ロイヤルファミリーという具合の此岸臭のなさ。でもここまで浮世離れした人をきちんとキャラとして成立させられているのが、中谷美紀のえらいところだなあと思った。もっとも、「2才児を虐待する生活疲れした主婦29歳出会い系サイトにはまる」とか、そういう生々しい役が出来る人かというと分からないんだけれど、キャスティングは電車・エルメスともにぴったり。
 映画とドラマを比べている人のブログなんかをいくつか見たけれど、やれオタクっぽさはどっちが勝るとか、元がいいからオタクじゃないとか、そういう配役と役者の性質の問題じゃなさそう。山田さんは騒ぐほどのイケメンではない。けれど画面で引き立つ清潔な泥臭さは他の若手にはない武器だと思う。今後この泥くささがどう変化するのかな、なんて思った。
 個人的には映画版の監督のセンスはなかなか好き。やり取りの文字を画面に割り込ませたりする、そのさじ加減がつぼだった。ドラマは、オタク以前に単なるダメな生き物という感じでついていけず、わざとらしく生きててすんませんみたいな人間って疲れる。