『エレファント』

エレファント デラックス版 [DVD] ついでに昨日のコロンバイン事件でもうひとつ。「群盲、像を撫でる」か「触れる」かという意味かと思っていたら、違うと監督自身が言っていた覚えが。「It’s the elephant in your living room.(居間にいる象)」という、見て見ぬふりをさす諺の方ですって。ガス・ヴァン・サント。とくに好きな監督ではなく、オリエンタル3部作なんかもう全部、どうだいそれな出来。
 平坦な日常の延長線に起こった事件を、ただただ説明も無く、心理描写も無く、イデオロギーも述べずに進んでいく。ありふれた退屈な日。おかしいくらいに透明で美しいポートレイトで、このあたりはたぶん好き好きなんだと思う。実際の事件を作品化する場合、結局どうあってもどう掘り下げても真実なんて分からんわけだし、ここで下手に説教臭くなられるよりもずっといい。
 ただこの映画では、アレックスがエリックを何と無く「ぱすん」と撃つシーンが納得いかなかった。実際の事件では、キャビネットに隠れていた美術教師が、二人の大声「one! two! three!!」のカウントに続いて銃声が響いたのを聞いているそう。この事件の結末で、この心中は結構重要なんじゃないのかと思う。
 でも、eeney meeny miny moのラストは、それはそれでよかった気も。その後三発くらい銃声だけ(女、男、アレックス自身)が入っても良かったのかもしれないけれど。